今回から何回かに渡って私とタロットの付き合い、いわゆるタロット遍歴を書いてみたいと思っています。タロットカードといえば22枚の大アルカナと56枚の小アルカナの78枚のカードですが、昔はそれほど知識も普及していなくてプロでも22枚だけで占っていた時代もありました。さすがに今22枚だけで占っているプロの占い師はほとんどいないと思いますが。それでも78枚の絵を描くのは大変ということで22枚だけのタロットも毎年新しいものがどんどん出てきています。こうしたものは実占用というよりは鑑賞用、コレクション用といえると思います。私もそのような22枚のデッキをいくつも所有しています。
私が初めてタロットに触れたのはたしか50年近く前のことです。それまでトランプ占いは本を片手にやっていましたが、タロットというものの存在は知っていたものの、どんなものかはわからず、という感じでした。今のようにちょっと大きめの書店に行けばタロットのコーナーがあるわけでもなく、昔はそうそう手にする機会は当然として、目にする機会すらほとんどありませんでした。たまたま叔父の家に遊びに行ったとき、最寄り駅にちょっと早く着きすぎてしまったので時間つぶしで入った成城学園前の書店で目にした辛島宜夫さんの「タロット占いの秘密」(サラ・ブックス:1974年版)が私にとってのはじめてのタロットでした。
モノクロの78枚のカードで、実物を手にしたのはこれが初めてだったので特に違和感なく受けいれていました。今ならカラーの方が……などと思うのでしょうが、当時はそんなことは思いもせず、ともかく、本を片手に色々なことを占っては驚嘆し、熱中していました。何よりもそれまで本の中でしか見たことがなかったタロットカードを手に入れたことに興奮していたという感じでした。
このほんとカードのセットは160万部以上売れたということですからこれを読んでくださっている方の中にも手にした人がいるのではないでしょうか。エジプト風の絵のカードですが、解説の方はわりとオーソドックスでその後本格的にウエイト版などのタロット占いに取り組んでいくに当たっての良い入門書と私にとってはなりました。極めてどうでも良い話ですがこの辛島さんは私の父親の先輩にあたる方でもあったので、その後ウエイト版などのカラー版のタロットばかりを実占にはもっぱら使うようになってもなんとなく親しみを持ち続けたカードでした。(橘青洲)