私のタロット遍歴(2)

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「タロット占いの秘密」と出会って3年ほどした後、今度は初めてのフルカラー版のタロットカードを手にすることになりました。それは今はなき大陸書房から出されていたアレクサンドリア木星王の「タロット入門と占い」(1975年版)でした。そしてこれが誰が相談にくるかわからない状態で人を占った最初の機会を私に与えてくれました。ちなみにこのカードとセット、私が自分で買ったものではなく「買ってもらったもの」だったのです。

私が持病で学校を休んでいる間に当時在籍していた部活動のメインメンバーの間で「女の子に人気のある出し物をしたい」と意見がまとまって、そこから「占いをやろう」となり、私が数日ぶりに学校に出てきたときには階段わきの一等地にブースの申請許可が降りていて、私が占い師になることも勝手に決定されていたのでした。

正直驚くよりも、これで自分や知り合いばかりでなくランダムに人を占うことができる、とうれしさの方が大きかったのをよく憶えています。ですがそうなると人間欲が出てきます。そこで「しかし、どうも辛島さんのカードではモノクロだし、様にならないなぁ……」と難しい顔をしてぼやいてみました。すると部長をやっていた友人が「なら部費でカラーのしっかりしたのを買ったらいいのでは」と言ってくれたのです。これ幸に私も「カラーの方が絶対受けるよ」と。そんなこんなでめでたくその週の土曜日にタロットを買いに行くことになりました。ちなみに2,500円のカードと本のセットはなかなか学生には手が出せるものではありませんでした。当時はちょうどオイルショックの影響で物価などが一気に上がった時期でした。ちなみに当時の大卒初任給80.500円、高卒初任給66.000円、定食が350円、映画が3本立てリバイバルで300円、たばこが100円という感じの時代ですから、学生から見たらかなり高嶺の花だったことが分かっていただけると思います。それが思わぬ話から手に入ることになって大喜びしたいところを表面に出さないようにするのが大変でした。

この「タロット入門と占い」のカードはかなりウエイト版に忠実で、しかも国産のカードだったので紙質もしっかりしていて非常に占いやすいものでした。後年、同じような時代の海外製のカードを幾つか試したことがあるのですが紙質が悪く、やはりあの当時の国産タロットは世界的にも品質という意味ではトップレベルの水準だったのだな、と改めて思ったりしたものでした。また、オリジナルのウエイト版なとが簡単には手に入らなかった時代にウエイトに忠実なカードを最初のフルカラータロットとして手にすることができたというのは非常に幸運だったと今でも思います。

この本とカードのセットの本の方を読み進めたとき、私は衝撃を受けました。と、いうのも「タロット占いの秘密」には簡単な意味とケルト十字法の開き方が載っているだけでしたが、この本には季節の読み方や組み合わせての読み方など、当時としては最新の技法が盛りだくさんだったからです。この本は2022年現在の今でも十分に価値があり、実践的な本だと思います。木星王氏まだ若く、野心的な本を出し続けるスタート時のものだったので余計、そうした中身の濃い本になっていたのではないかと思います。

さて、とはいえ感動ばかりもしていられませんでした。本を手にしてから本番まで4日しかなかったので、必死にカードを広げては本とつきあわせ、放課後には友人をつかまえては本を片手に練習し、というドタバタ劇のような日々がすぎて、当日には何とか本を見ないで占えるようになっていました。(橘青洲)

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