占いを続けていると色々な人との出会いがあります。前回の議員さんや、その議員さんに紹介された他の議員さん等から始まり、それこそ様々な人と出会ってきました。そんな中でおそらく一生忘れられない出会いがありました。
私の友人(と、言っても私よりずっと年上でした)がある時虫垂炎を悪化させてしまい腹膜炎になり、その他にも色々不都合があったらしく数カ月の入院となってしまいました。お見舞いにいったときに「入院中ずっと店を閉めておくわけにもいかないから代わりに占い師をやっておいてくれないか」と頼まれました。彼には以前から色々とお世話にもなっていたので私は快くそれを引き受けることにしました。
翌日から昼過ぎから夜の8時まで店番兼占い師として通うことになりました。占いの店というのは面白いもので、どの店にもお客さんの傾向に結構な差があるものです。例えば恋愛問題の相談が圧倒的に多い店があれば、その逆に離婚相談が圧倒的に多い店もあります。友人の店は仕事帰りのサラリーマンやOLが多く、昼過ぎから開店していても忙しくなるのは17時すぎてから、という感じでした。相談内容も仕事のこと、恋愛・結婚について、人間関係などバランスがとれている感じがしました。そうしたお客さんを毎日見ながら無事に1カ月が過ぎていきました。
2カ月目のある日、雨も降っていたので「今日は20時ちょうどで完全に終わらせて帰ろう」と思っていた日のことでした。看板の電気を19時半には早々に消して店内の片づけ等が一通り終わり、あと10分ほど20時までにはあったので一休みしてから帰ろうとしていました。20時3分前になって「さて帰ろうか」と立ち上がりかけたときにいきなりドアが開いて男の人が飛び込んできました。ぎりぎり閉店時間前でしたので「仕方ない……」と思いながら「どうぞ」と席に案内をしました。ところが店内をきょろきょろするばかりでなかなか座りません。私は早く終わらせたかったので、ちょっと強めに「どうぞおかけください」と言いました。すると、その男性客は私の対面の椅子に腰掛けたまま、今度はうつむいて何も話しません。時々、占い師の前に座って何をいえば良いかわからなくなって黙ってしまうお客さんというのはいます。ですからそうした時のある種決まり文句で「今日はどうされましたか?何にお困りですか?」と問いかけました。すると今度は顔を上げて私の目をじっと見つめてきます。
私はさっさと占って帰りたかったのですが、質問をしてくれなければ占いようもありません。仕方ないので「何かでお困りなのですよね?」と聞くと、ビクッとした感じを一瞬見せてから無言でうなづきます。そのまままた無言なので仕方なく「ではその困ったことについてみてみましょうね」と言ってカードを開き始めました。
カードを開き終わって読み始めると、今度は私の方が後悔は緊張に包まれました。恐る恐るお客の方を見ると不安そうな、そして何か思い詰めたような目つきでじっと私を見ています。直感的に私は絶望感と同時に自分の読みが完璧であることを悟ってしまいました。